夏の学校 終了

Iryo2008-08-05

風景づくり夏の学校が終了しました.

「移動するまなざし その体験と交流をデザインする」をテーマとして,全国各地から40名ほどの学生さんが参加しました.3日間にわたる激しいグループワークを終え,今家路につきました.

今年の風景づくり夏の学校で「移動するまなざし その体験と交流をデザインする」というテーマを設定した際,まちづくりという言葉から想像されるアマチュアイズム的な風景の保全運動と,しまなみという特異な地形が生み出している生業としての鮮烈なまでに美しい風景の狭間で,この風景とその生業をどのように精度をあげながら再構築していくべきなのかについて頭を悩ましていました.ひとつの糸口として,私はものをつくるのではなく,あえて「移動するまなざし」というツーリズムに着目した課題を学生のみなさんに投げかけました.ここではないどこかへ移動すること.そのことにどんな意味があるのか.しまなみという場所は,どうやってそのまなざしを受け止めようとしているのか,ツーリズムという視点で考えてほしかったからです.

一年でいちばん暑い夏の日に全国各地から集まった学生の皆さんが自転車と船と自分の足で駆け回り,風景美術館に,龍神社への浜引き唄の奉納,風景カフェに灯篭ライトアップ,いろんな企画を学生スタッフが一生懸命実行し,個人プランを地元の人々の前で自分自身の言葉で語ることで,事前に空想をふくらませ学生の皆さんが作成した机上の空論は,すこしは皮膚感覚のあるプランへと変貌したでしょうか.

波止浜をみんなが去った翌日,今治気象台では今日,観測史上最高となる37.7℃を観測しました.

糸山から夕暮れ時に夜明けの方向を見ると,来島海峡を塞ぐ馬島と小島とその向こうの大島を配置する地形が生み出す日本で最も強い強い潮流がどこまでも流れていきます.その潮流に逆らって力強く進む船に刻々と変化する赤い残映が美しく照らし出され,その光は,波止浜の箱型湾ドックに停泊する大きな船たちにも,その特異な地形と風景の中で生業として船を日々造る人々にも,釣竿一本を頼りに鯛を釣り漁を行う人々をも同時に平等に照らし出します.

眼前にひろがるこの風景を,いかに演繹的な精緻なアプローチで分析し解析したところで,そうして出来たプランは理屈の上では正しくても,現場では必ずしも正解でない,いかにも無力である場合があります.そういう領域まで,果たしてみなさんのプランは辿り着いたでしょうか.

第四回風景づくりの学校に献身的にご協力いただいたすべてのみなさまと,地域のために懸命にプラン作成に挑んでくれた学生の皆さんに心からお礼もうしあげます.ありがとうございました.