おめでとう

暑いな.夏だし.当たり前か.

石川さんの好きな映画は「単騎,千里を走る(http://d.hatena.ne.jp/Iryo/20071229)」だということを,ラジオ番組に一緒に出たとき初めて知った.「単騎千里を走る」は低予算映画で,確かに完成度は高くないのだけれど,あの雲南省の美しい風景は焼き付けられるように心に残る.石川さんは中国語学科卒業ということもあっただろうか,町のヒトが全員で長いテーブルを囲んで,病に伏した仲違いしてしまった息子のために旅を続ける高倉健を歓待するあの風景が忘れられないんですよね.と言っていた.

200kmにわたって遍路道を踏査したとき,石川さんは年度末の忙しいなか,会社になんと言い訳したのかもわからないが,兎に角時間をさいてくれて,長い距離を一緒に歩いてくれた.ちゃっかり白装束と杖も用意していて,こいうのは格好が大事なんですよー,とか意味不明なことをいいながら笑っていたのが印象に残っている.満開の桜の木の下でいっしょにお接待を受け,茣蓙にちょこんと座って鶯が鳴く中で伊賀さんたちと一緒に手作りの羊羹をいただいた.般若心経を渡すと一生懸命大森さんに読み方を教わりながら読んでいた後姿を思い出す.

濱上が,色紙を持って例によって自転車で坂をハアハアいいながらのぼって駆けつけてきたのが笑える.なかなか人望が篤いなあ,石川さん.にしてもこんな暑い季節にと思わないでもない.ぷぷ.

石川さんの妹さんを見ていて(というかたぶん,そうに違いないとこちらで勝手に思ってるだけだけど),なんとなく雰囲気が似ている.カメラを持って他人のことに矢鱈に過剰に懸命なんだな.目に見えるところだけに目がいきがちな学生たちの陰で,風景美術館の準備や撤収作業や掃除とか.だれーも気がつかないようなところに目を配って一生懸命過剰に真剣に取り組んでいた石川さんの姿に重なる.

得になるなら動くけど,関係なければ注意も向かないし何も手伝わないで知らんぷりするのが普通だ.でもちっちゃなSOSに気付く人がいる.誰も目を向けない本当に些細なことに対して石川さんだけは一生懸命黙って手伝ってくれた.きっと愛情いっぱいに育ったんだろうな.もちろんそれだけじゃないんだろうけど,とても羨ましいことだと思った.

5年前,飛行機の中で初めて出会ったとき,パチパチ計算していた私のPCを何かチラチラのぞきこんでいた石川さんの姿が印象に残っている.あれも何かの縁だったのか,最初の頃は,風景づくりとか,景観とか一体それは何ですか?という感じであった.しかし兎も角好奇心旺盛で,そしてにこにこしながらずっと変わらず,予算があるとかないとか関係なく彼女だけが,粘り強く終始かわらずうまくいくかもぜんぜんよくわからないことを最後まで手伝い続けてくれた.

何度となく,クルマで一緒に松山と南予の間を往復した.田舎の夜道に道を迷い,満月がのぼり,ハクビシンが駆け抜ける歯長峠を何度も越えていった.何が正しいとか間違っているとか,こうやればいいとか,最初からわかっていたわけではない.今だってよくわからないことは多い.までも過剰なまでの真剣さで,不利とか有利とか,お金になるとかならないとか,近いとか遠いとか,面倒だとか楽チンだとか,自分のことだからとか他人のことだからとか.そいうことにお構いなしで,目の前にいる人たちやにっちもさっちもうまくいかない現実と誠実に向き合ってくれた.そのことに感謝している.

目黒の田植えの時には水路にまぎれこんだ鱒を捉えるのに大騒ぎで,都会育ちぶりを遺憾なく発揮していたのはおかしかった.内子に行っても大丈夫なのかねといささか心配である.までも大丈夫に違いない.

結婚おめでとう.そして本当にありがとう,これからも元気で.