広田 炭づくり

砥部町砥部焼きで知られた土地だが,炭焼き窯もいくつかあって,このあたりから出る砥石くずで塗り固めた親父さんの代から受け継いだ窯を使って,樫や蜜柑の乾木を詰めて炭を焼いている人たちがいる.

切り倒した硬い生木を,山の斜面からどんどん道側に放り投げて,道に落ちた木を軽トラで運び出す.その後また乾木をチェーンソーで適当な長さに切断していって,どんどん詰めていく.薪は樫の木などを順序良く立てて詰め,上の隙間を蜜柑の木で詰める.

窯のそばの土塊を水でこね,窯の口に塗り,その上から煉瓦を敷きつめ,また手で土塊をつかみ煉瓦の上に塗る.しばらくすると火入れ口ができあがった.火をいれる.煙が窯から立ち上る.2日燃やして,2週間たって窯だしになるそうだ.少し煙が出てくるのが確かに早い.木の詰め方がゆるかったのかもしれないとみんなで反省した.

その土地らしさとは何かとよく考え,丁寧にプログラムを作っていくことは簡単ではない.よく考えられたプログラムはメンテナンスフリーであることもあるが,たいていはリファクタリングが必要になる.ときは何もしないことが適切な場合もあるのかもしれない.

土地には,土地の風景が確かにある.土地は,海からその土地までの距離や,山の高さとその方角,谷筋を流れる川の水や,それらを構成する石や土くれの性質,吹きぬける風の強さや,その風にゆれる木々の種類,さえずる鳥の鳴き声,花のさく木の樹齢や,飛んでくるミツバチの羽音や,そいうものでその土地の風景は成り立っていている.風景づくりなんていうものをはじめてもう3年が経った.景観10年,風景100年,風土1000年とか耳障りのいいことを言ってきたが,果たしてどれだけその土地の(物言わぬ)風景の声を聞けているだろうか.とふと思った.