単騎、千里を走る(しまなみ風景遺産789 )
ラジオの収録にいってきました.1月放送分4本録り,プラス1本を年末の生放送で放送作家兼ナビゲーターをしてきました.
http://www.shikoku-fukei.jp/shimanami789/
第一週の話題は「風景と映画」,第二週は「八木亀三郎邸のリノベ・ディベート」,第三週は「大月の夜桜音楽会」,第四週は「目黒の蛍の畦道」についてそれぞれ構成を考えて30分番組なので計150分をスタジオで録りました.
途中,ミュージシャンの仙九郎のアコギの即興もはいって,なかなかよい感じに盛り上がったと思うのですが,なかなかラジオは難しいですね.間が空くとアウトなので,,生放送もやってみたのですが,寧ろそちらの方が緊張感があってよいかんじでした.,
風景と映画では「単騎、千里を走る」の話をとりあげました.監督はチャン・イーモウさんで高倉健さん主演の映画です.
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母親の死を原因に仲たがいして疎遠になってしまった息子が癌に侵され,余命幾ばくもないことを高倉健演じる父親が知るところからドラマは始まります.大学研究者であった息子が研究者として頑迷なまでに執着していた伝説的な仮面劇の踊り手を,息子に代わって父が探し出すために,本当に美しい雲南の世界遺産を背景に旅を続けるロードムービーです.
父はなれない言葉,なれない環境の中で,息子の仕事を完成させようと尽力します,確執のせいで自分から離れていった息子がいったい何にうちこみ,仮面劇にいったい何をみたのか.その旅は,母に続いて逆縁により先立とうとしている息子自身を,父親自身がそのつたない行為を通して必死で理解しようとする精一杯の行為に見えます.
高倉健さん演じる父親が不器用ゆえに抱えてきた孤独.言葉も通じない彼の必死の行為の果てに,旅先で村人が総出で歓待するシーンが圧巻です.仮面劇の踊り手が、刑務所で息子の写真を見るときもらい泣きする囚人たち,孤独な父の血を,息子もまた継いでいることを知ったときの高倉健の目に涙がこぼれます.
父親以外の登場人物はすべて現地の一般の人々が演じています.どこか訥々とした映画のつくりですが,チャンイーモウ監督の「今という時代からこそ,顔と顔をを会わせ人と人が交流することこそが,私たちが失ってはならない大切なことだと思うのです」というメッセージは題名となっている仮面劇のあらすじを知らなくても心に響きます.
高倉健さんは,インタビューの中で「映画」というものを,「誰かが種を蒔いて,それが綺麗な花をさかせて大勢の人に愛でて貰うもの」だとたとえています.10年以上も長い歳月をかけたこの映画にかけた思いは,どこかで何かに通じるものを感じました.