バルセロナ行(2)

Iryo2008-09-07

日中,計算に飽きて旧市街地まで歩きに出る.

新市街からぷらりと歩くと城壁跡を跨いだあたりから急に道の風景が変化したことに気付いた.

バルセロナはかつては城壁に囲まれていたRAVAL, GOTIC, Dependecies, BARCELONETAの4地区から構成される旧市街(第一区)とその外側のグラシアなど9つの地区から構成される.外側の地区をぷらり歩くと19世紀に急速に進んだ都市化に対応すべく当時法律家であったセルダが打ち出した拡張都市計画の名残が見てとれる.100m程度の大きなブロックの隅きりは当時蒸気機関車という交通機関の転回を意識して設計された.今ではそうして大きくとられた道路空間がオープンカフェや自転車共同利用のための駐輪場やトラムのためのスペースとして有効に使われている.

グラシア地区から凱旋門を経てふらりと旧市街に入る.道はだんだん細くなり視界は木立の緑で覆われる.そうして,旧い街並みの中にいくつものほっこりした広場が細い街路の奥に存在していることに気付く.

ひっそりとした細い路地に迷い込めば,日常のゆったりとした余剰時間が空間の中で見事に風景として立ち顕れているようですばらしい.よく見ると街区の中の旧い建物を大胆に取り壊しその空間を公共空間として利用しているようで,バルセロナモデルのひとつとして取り上げられたことのある(阿部:2006)多孔質化(スポンジ化)とよばれるリノベーションの成果だろうか.

ピカソ美術館のような人気のある施設の設計に際しては,大げさな施設を新たに旧い空間の中に挿入して中途半端にアピールするなんて無粋な真似はしていない.旧市街の不均一なグリッドの中にある旧家をさりげなくリノベーションする.ゆったりと迷いながらもピクチャレスクに誘われて歩いて巡る.そうしてだんだん辿り着き,喧騒に疲れたたならまた静謐な広場が顕れる.そいう回遊スタイルに馴染ませるように,地の風景に溶けこむように,丁寧な都市空間の設計がなされている.

郊外にいけばど派手な開発事業も行われていたりするのだけれど,地区単位で明らかに異なる空間様式,それに応じた行動文脈.そいうのをしっかり踏まえて,建築的なアプローチと都市的なアプローチがうまく使い分けられてる.そうしてはじめて多相的な空間が成り立っていて,同じバルセロナでも,新市街と11万人程度の人々が住む旧市街とでは区割りの基本サイズや街路の不均一な具合も大きく異なるのだけれど.移民が住んでいたり,貧しい人がすんでいたり,子供が走り回ったり,爺さんが木陰で涼んでいたり.どうしてもジェントリフィケーションによってそいうモザイクもだんだん変わったりいろいろあるだろう.だけどそれでも同じバルセロナの中に在って,それぞれの界隈の地域性がしっかりと空間と,その暮らしぶりに残っている.そういう確かなばらばらさが,バルセロナという器の中で問題を抱えながらなんとか成っていることを不思議に思った.